郵便受けを見に出たときに、今日の涼しさを知った。あんまり褒められた一日じゃなかった。遅く寝起き、遅い朝食をとり、ずっと部屋にこもっていた。辛いものを食べたから、一日中ずっとお腹が痛かった。夏の旅行のことを思い出したりしていた。冷房はいらなくて代わりに窓を開け放していたので、吹かれる風がさびしかった。 まるで慰めるように、夏以来はじめてお湯を張った。暑いからよしていたのを、陽気を見計らったように。このチャンスを、一週間ほどずっとうかがっていた。身体があいていて、日が落ちる前にお風呂に入れる日が涼しくあるようにと、ころころ変わる天気予報を日に何度もチェックしていた。入浴剤も買ってあった。 ひと夏のあいだ使わない浴槽も、三日に一度は洗っていた。かわいい薄ピンク色のかびをごしごし削って、いたちごっこだった。おかげか、冬と同じように軽く洗っただけですぐに綺麗になった。報われた気がした。 首まで浸かって蓋を閉じると洞窟じみる。ときどき結露が落ちるのもそれっぽい。温かかった。上がるときに、少し立ちくらみがした。 この季節が好きだと、得意になって話していた年があった気がする。切ないから苦手だと、そう話していた年があった気がする。明るいうちについ寝てしまって、だから夜は眠られない。ギターの弦が錆びているのに、ずっとそのままにしている。これから夜はどんどん長くなるらしい。