朝のバイト後、後輩のS君に誘われて、くだんのカントさんふくめ三人で昼を食べた。S君ははじめ家系ラーメンが食べたいと言っていて(昨晩何か動画を見たらしくそのせいでラーメンの口になっているのだと)、しかし本音を言うと僕もカントさんもラーメンが入りそうなお腹はなかった。ちょうどその時、カントさんは慢性的な身体の不調、気分がすぐれず気分の悪い日が多いと愚痴をこぼしていて、僕が「禁煙したらどうです」と言ったら「たしかに」と言ったきり黙ってしまうので何かこっちが悪いような気がしていた。
結局、S君はどうか武道家(ラーメン屋)は勘弁してくれと情けない大学院生二人のの頼みを聞いてくれて、さてじゃあ何を食べようかという話になったとき、S君が「沖縄そばが食べたい」といった。僕とカントさんは吸っていた煙草をにじり消し、「いいね」といった。蒸し暑い日だった。「麻の葉」という居酒屋の早稲田通りを挟んだ向かいに店がある。わりと新しいところで、そこにあるのは知っていても足を運んだことはなかった。この頃は独りで食事を摂るか我慢してしまうか、そういうのに慣れていて、じつを言うと、カントさんとシフトが被る度に喫煙所に誘いたくなっても、それすら口にはできないのが常だった。だから、S君の誘いはなんとなしに嬉しかった。
カントさんはソーキそば、僕はソーキ丼とミニそばのセット、S君はソーキのせカレーを食べた。沖縄そばのおだしっぽくないしょっぱい汁の味がどうも苦手で、でもソーキがとても美味しかった。三人ともおいしいおいしいと言って食べた。
二人と別れた後図書館に寄り、少しだけ眠ってそれからいくつか資料に目を通した。哲学書ばかりはいっている四階の大きな採光窓からはスカイツリーがよく見えて、最上階だからこもって少し暑くなるけれど、そこがずっと好きだった。馬場まで歩いて帰ろうと思っていたら何かがぱちぱちと窓を叩く音がして、何かと思ったら雨粒だった。帰りは少し濡れて、その拍子に、なぜか、昨日の帰り(午後三時ぐらいだったろうか)、古着屋の隣のお地蔵さんのあたりで、赤いヘルプカードをランドセルに付けた女の子が、ペットボトルの葡萄ジュースをおいしそうに飲んでいるのを見たことを思い出した。初秋と葡萄ジュースーそれは何かとても素敵な取り合わせで、これならカントさんやあるいは僕らの腹の底にへばりつく屈託も取り払ってくれるんじゃないか…そんな気がした。それで少し泣いた。
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